「草っぱの聖霊の役になったから染めた」

その緑色の頭は、先生からは不評で寧ろ呼び出しを喰らったほどだが、クラスの中ではすこぶる好評だった。
私も賛成で、ここまでしたことをすごいと思ったし、いつもふざけてばかりいたフキを見直した。
その頭は本当に新緑のような色で、日の下に出る度に綺麗に輝いていた。



学校の帰り、私はフキと一緒に帰った。天気が良かったので、近くの原っぱへ行った。

「劇、楽しみだなーっ」

明日から再来週の演劇会への練習が始まる。私は森の住人Bになったので、たいして役作りは必要なかった。

「私は楽だけど、フキはけっこう大変なんじゃない?」

春の強い風が吹き荒れる。草が一斉に同じ方向へ傾く。

「主役やりたかったからいんだよ」

草っぱの聖霊が主人公の、自然をテーマにした物語。選んだのは先生だったけど、反対した人は一人か二人だった。

「おれぜってー成功させてやるよ」

クラスの殆どが賛成したのは、フキが草っぱの聖霊の性格にそっくりだったからだ。
こいつ自身、それには気付いてないみたいだけれど。
風が吹いて、草とフキの髪が一緒になって舞い上がった。流動したその瞬間、フキが草っぱの聖霊になったように見えた。
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草っぱの聖霊